縄文イヌはどこから/家畜化したニホンオオカミ? /8
Written by officematsunaga on 土曜日, 12月 22nd, 2007 in 日本列島にいた狼たち.
◎日本列島にいた狼たち/ジャーナリスト橋本伸/8/縄文イヌはどこから/家畜化したニホンオオカミ?
氷河時代末のドイツ・ライン地方の集落遺跡「ゲナスドルフ」は、火山から噴出した軽石に覆われ、さまざまな遺物、住居跡が良好な状態で残っていたことで知られています。放射性炭素の年代測定によると、住居跡は紀元前1万400年のもので、当時は、温暖期に属していました。
歯に家畜化の兆候
注目されるのは、ここから発見された二つのオオカミの歯です。オオカミを家畜化すると、その兆候は歯にも現れますが、ゲナスドルフのオオカミの歯は、わずかしか変形していないので、「すでに『イヌ』、あるいは幼獣を捕まえて人間が飼い慣らしたオオカミであると、明言できないこともない」(『ゲナスドルフ―氷河時代狩猟民の世界』)と指摘されています。
明治大学名誉教授の大塚初重氏は、近著『考古学から見た日本人』で、3万年以上前に住んでいた旧人・ネアンデルタール人がすでにオオカミを飼い慣らし、マンモスを狩っていたという説があることを紹介しています。
実際、ネアンデルタール人が3万年前に飼っていたイヌの骨を、東京大学理学部の調査隊がシリアで発見したという指摘もあります(佐原眞著『体系日本の歴史‘本人の誕生』)。
ネアンデルタール人がイヌを飼っていたとすれば、新人と呼ばれる私たちの直接の祖先が、親とはぐれた子オオカミや巣穴の子オオカミを捕らえて飼い慣らし、狩猟に使ったことは、十分考えられます。
飼い慣らす努力が
日本でも「長野県茅野市近郊の遺跡では、ニホンオオカミを飼い慣らして、家犬化することに努力している」(直良信夫著『狩猟』)という例も発見されています。
では、縄文イヌは、ニホンオオカミを飼い慣らし、家畜化したものなのでしょうか。そういう気がしないでもありません。
しかし、「骨学的研究によれば、和歌山県産のイヌにニホンオオカミの特徴らしきものがわずかに出現するけれども、現在の日本犬にニホンオオカミの血は一滴も混ざっていないというのが定説である」(今泉忠明著『イヌの力』2000年刊)という指摘もあります。
確かに、縄文時代早期に発見された日本最古の縄文イヌ(約9500年前の夏島貝塚遺跡)が完全に家畜化されたイヌであることから、大陸から渡来したと考える方が自然かもしれません。
岐阜大学農学部の田名部雄一教授(当時)の「血液タンパク質」に注目した研究によると、本州の日本犬の祖型は、南方から渡来したヘモグロビン遺伝子と朝鮮半島から渡来したヘモグロビン遺伝子の両タイプの混血によって生じたものと推測されています(猪熊壽著『イヌの動物学』2001年刊から)。
大きさ柴犬ほど
今泉氏は、縄文人とともに各地にすみ着いた日本犬の祖先たちはその後に朝鮮半島経由で渡ってきた弥生犬の交雑を受け、日本犬が誕生したとしています。
では、縄文イヌの容姿はどんなものだったのでしょうか。肩までの高さは35造ら40汰宛紊函中型の日本犬ぐらいのニホンオオカミよりさらに小型で、柴犬ほどの大きさです。大塚氏は先の著書で、こう書いています。
「現在の柴犬など在来の日本犬と比べると、骨が丈夫で、顔立ちもより鼻筋がとおったキツネ顔で、猟犬のようにあばら骨が浮き出るほど痩身だったという」
また、縄文時代の泥人形やその後の銅鐸に描かれたイノシシ狩りの絵によれば、立耳・巻尾です。
縄文時代初期に弓矢を手に入れた縄文人は、縄文イヌの助けを得て、シカやイノシシ狩りをしていたようです。縄文イヌが各地で大切に埋葬されていた理由が分かるような気がします。