◎日本列島にいた狼たち/ジャーナリスト橋本伸/4
化石オオカミ/青森県尻屋崎から世界最大の臼歯

 2000年1月15日、長野県飯田市美術博物館の学芸員、小泉明裕氏は、東京都昭島市の多摩川の河床に露出する「上総層群」から、170万年前のイヌ属の化石を発見したと発表しました(中日新聞同月16日付)。

オオカミ4の2
1904年ごろ捕獲された和歌山大学のニホンオオカミの剥製

臼歯34・5ミリも

 イヌ属といっても、イヌはまだ地球上に存在していない年代です。オオカミやコヨーテの祖先といってよい化石かもしれません。
 化石は、下あごの第一臼歯の長さが約30世如▲ナダやユーラシア大陸に生息するタイリクオオカミや、日本各地で化石が発見されている大型の「化石オオカミ」に近い大きさでした。
 数十万年前に生存した日本の化石オオカミは、栃木県葛生町(現・佐野市)、青森県下北郡東通村の尻屋崎、静岡県引佐郡井伊谷村(現・浜松市北区引佐町井伊谷)などの石灰洞などで発見されています。
 斎藤弘吉氏は、化石オオカミについて、著書『日本の犬と狼』(1964年刊)でこう指摘しています。
 「これらを計測してみると、その体格が共通して現代の日本狼、朝鮮狼、支那狼よりはるかに大きく、また日本の石器時代の狼よりも大きい。我が国の化石狼と匹敵するのは全世界の現代の狼のうち、最も体格の大きいシベリア、北海道の狼である。この化石狼の下第一臼歯はおよそ28整幣紊發△辰董特に尻屋崎から発見のものは34・5世發△蝓現在まで全世界で発見された狼の同歯中最大である」

中型の日本犬ほど

 実際、1988年の国立科学博物館の「日本人の起源展」の資料に掲載された静岡県引佐町の化石オオカミの下あごの化石は、ニホンオオカミの下あごの1・5倍ほどもあります。
 では、ニホンオオカミの大きさはどのくらいかというと、下第一後臼歯が24世ら28世任后イヌ科動物の研究家で知られる平岩米吉氏によれば、肩までの高さが55汰宛紊如◆崙本犬の中型の雄、あるいは、雌のシェパード犬の大きさに、きわめてよく似ている」そうです。
 筆者が展覧会で見た和歌山大学所蔵のはく製のニホンオオカミも、肩の高さが52・5造如中型の日本犬ぐらいありました。これに比べ、エゾオオカミは、ずっと大きかったようです。
 1938年、北海道を訪れた直良信夫氏は、アイヌの古老から明治初期のエゾオオカミの生態を聞きだすことができたとして、『日本産獣類雑話』で、こう書いています。
 「耳は立耳で毛が長く、背は茶褐色、腹は淡褐色、尾は絶対に巻く事なく、肩高一米、首が比較的短かく胴体はよく太って丸みをもっていた。家犬のようにワンワンと吠えるのではなく、狼特有のウォーウォーであった」
 肩高1辰蓮▲ーバーのようです。というのは、ハイイロオオカミ(タイリクオオカミともいう)の肩高でさえ、68造ら97臓丙泉忠明著『野生イヌの百科』)とされているからです。ちなみに平岩米吉氏は、有名な「オオカミ王ロボ」の肩の高さは91造世辰燭肇掘璽肇鵑記載している、とのべています。

なぜ姿を消した

 前にのべたように、体重からいって小型のハイイロオオカミのオスぐらいだったエゾオオカミの肩の高さは、ハイイロオオカミより低かったと考えられます。では、日本列島にいた大型の化石オオカミはなぜ、姿を消したのでしょうか。 斎藤弘吉氏は、氷河期に北方の大型オオカミが日本に生息していたが、日本が温暖期に移るころになって、南方系の小型のオオカミが移住し、気候の変動とともに主力を占め、ニホンオオカミの祖先になったという趣旨の結論をのべています。 

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